十二指腸潰瘍とは十二指腸とは、胃と小腸の間にある約25㎝の腸管で、膵臓や肝臓からの消化酵素などが分泌される臓器です。その十二指腸の粘膜に、炎症や血流障害などで深い傷ができる病気が十二指腸潰瘍です。放置すると潰瘍が進行し、出血や穿孔(穴が開く)といった重篤な合併症を引き起こす可能性があります。十二指腸潰瘍の原因について十二指腸に潰瘍ができる原因は多岐に渡り、感染や免疫応答による炎症、薬剤による粘膜障害や、血流障害が原因として挙げられます。以下に起こしうる原因を主要なものを記載しました。ヘリコバクター・ピロリ菌胃十二指腸潰瘍の原因の約57%が、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori, ピロリ菌)という胃の中に住む細菌であることが分かっています1)。免疫力の少ない幼少期に感染し、慢性的な炎症を起こすことで胃や十二指腸潰瘍を引き起こします。現在では上水道の衛生管理と除菌治療の普及により減少傾向にありますが、未だに消化性潰瘍の大きな原因となっています。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)ピロリ菌の減少により、相対的に十二指腸潰瘍の原因として割合が増えてきているのが、薬剤の中でも非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)というお薬の使用です。一般的な頭痛薬や解熱剤として使われる種類のお薬ですが、消化管粘膜を保護するプロスタグランジンという物質の生成を妨げ、潰瘍を引き起こすリスクを高めます。その他の十二指腸潰瘍の原因ピロリ菌とNSAIDsが十二指腸潰瘍の大部分を占める原因ですが、その他に特定の薬剤(骨粗鬆症の治療薬の一部やバイアスピリンという抗血栓薬など)やピロリ菌以外の感染症(サイトメガロウイルス感染症など)や、自身の免疫の過剰応答による炎症(好酸球性胃腸炎など)でも頻度は低いですが潰瘍を引き起こします。またストレスで潰瘍ができるということが一般的にいわれていますが、心理的なストレスのみで潰瘍ができることは稀であり、集中治療室に入るような大きな身体的ストレスなどでは、自律神経のバランスが崩れることで潰瘍を起こすことがあります。潰瘍のサインに早く気づくことが重要十二指腸潰瘍では、空腹時に特に痛みが強くなることがあります。これは食事を取っていない時には胃酸が食物で中和されることなく十二指腸に流れ込み、潰瘍に接触することが理由だといわれています。逆に食事をすることで、食事と胃酸が混じることで酸性度が低下し、また胃酸分泌を抑制するホルモンなどが分泌されることで、一時的に症状が軽くなることもあります。また十二指腸潰瘍から消化管出血を起こした場合、胃酸と混ざって酸化することで黒色便 と呼ばれる黒い便がでることがあります。こちらは胃に近い消化管からの出血を疑う重要なサインとなります。適切な対処で出血や穿孔のリスクを減らす内視鏡検査(胃カメラ)による診断胃カメラは潰瘍の状態を直接観察できる最も有効な診断方法です。潰瘍の正確な位置や深さや性状を把握し、治療方針を決定します。また出血している潰瘍があれば内視鏡的に止血を行うことが推奨されており、再出血を予防する効果があることも証明されています。薬物治療プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2ブロッカーという胃酸分泌抑制剤が使用され、胃酸の分泌を抑えて粘膜の修復を促します。また、ピロリ菌感染が原因であれば、抗生物質を使った除菌治療が行われます。胃酸分泌抑制剤を使用している間は、治癒は進みますが潰瘍の原因を診断し介入しなければ、再発する可能性があります。そのため胃カメラでの経過観察と原因の除去が必要です。生活習慣の改善アルコール摂取の制限、禁煙が治療効果を高め、再発防止につながります。アルコールは直接的に消化管に障害を起こし、重度の喫煙は傷口の治癒を遅らせる可能性があることを十二指腸潰瘍の予防のポイント十二指腸潰瘍を予防するためには、日常生活で胃腸に負担をかけないことが大切です。飲酒喫煙など控えた規則正しい生活を心がけるとともに、NSAIDsの使用を必要最低限にすることでリスクを下げることが可能です。また過去にピロリ菌の検査歴がない方は一度医療機関で検査を受けられることもお勧めします。まとめ十二指腸潰瘍は、十二指腸に深い傷(潰瘍)が病気や薬剤が原因で発生することをいいます。原因としてピロリ菌とNSIADsが大きな原因の割合を占め、腹痛や黒色便など違和感を感じたら、症状が悪化しないうちに早めに医師を受診し胃カメラなど検討することが推奨されます。参考文献1)Tomohiro Nagasue, Shotaro Nakamura, Shuji Kochi, Koichi Kurahara, Hiroki Yaita, Keisuke Kawasaki, Tadahiko Fuchigami; Time Trends of the Impact of Helicobacter pylori Infection and Nonsteroidal Anti-Inflammatory Drugs on Peptic Ulcer Bleeding in Japanese Patients. Digestion 1 January 2015; 91 (1): 37-41.