「げっぷ」とは日常生活で自然に発生する「げっぷ」は、正式な名称は噫気/曖気(あいき)と呼ばれ、胃の中に貯まったガスを口から排出する生理現象です。食事中や炭酸飲料を飲んだ後、無意識のうちに出ることが多く、健康な体の正常な働きの一部とされていますが、人前で頻繁に出ると気になることもあるため、タイミングを考えることがマナーの一つかもしれません。しかし、頻繁にげっぷが出る場合は、飲食習慣や病気などが関係している可能性があります。日常生活に影響を与えるレベルのゲップは生活の質(QOL)を低下させることから「げっぷ障害」として機能性消化管疾患に定められています。2024年の文献では日本人の約1.5%がげっぷ障害を抱えていることが報告されました。げっぷの分類は?ガストリック型げっぷ(gastric belching)胃から食道を通じて空気が排出される生理的なゲップです。治療対象になるのは GERD(逆流性食道炎)や機能性ディスペプシア が背景にある場合になります。スープラガストリック型げっぷ(supragastric belching)空気を咽頭まで無意識に飲み込んですぐ吐き出す行動パターンを指します。機能性疾患(呑気症)で見られるげっぷ障害です。げっぷが頻繁に出るときの原因とは?げっぷの回数が増えたと感じる場合、いくつかの要因が考えられます。飲食習慣による影響食事や飲み物の選び方がげっぷの回数に影響を与えることがあります。炭酸飲料の摂取:炭酸飲料は胃の中でガスを発生させるため、げっぷの回数が増えます。ただし慢性的な症状というよりは、摂取直後のげっぷが特徴です。早食い・大食い:食べ物と一緒に空気を飲み込むことで、胃に余分な空気が溜まりやすくなります。満腹まで食べること:満腹まで食事を食べることもQOLを低下させるげっぷ障害の大きな要因とされています。刺激物の摂取:アルコールや辛い食べ物は胃の働きを活発にし、げっぷを誘発することがあります。咀嚼回数が極端に少ないまたは多い:咀嚼回数もげっぷ障害の発症に大きく影響することが報告されています。消化器系の疾患げっぷが頻繁に出る場合、消化器系の病気が関係している可能性もあります。逆流性食道炎:胃酸が食道へ逆流し、胸やけやげっぷが増えます。胃潰瘍・十二指腸潰瘍:胃や十二指腸の粘膜が傷つき、運動機能が低下することでげっぷや胃痛が発生します。機能性ディスペプシア:ストレスなどで胃や十二指腸の運動機能が低下し、食べ物の消化が遅れることでげっぷが増えます。食道裂孔ヘルニア:胃の一部が食道側へ移動した状態で、げっぷが頻発します。胃がん・食道がん:胃や食道の異常がげっぷの増加につながることがあります。消化器系以外の病気もげっぷに関連することが報告されています。甲状腺疾患:甲状腺が腫瘍などにより腫大した場合、気道や気管を圧迫することからげっぷが起こりやすくなります。また甲状腺機能亢進症に伴う自律神経の変化でもげっぷの原因になります。精神疾患:不安障害やパニック障害においても空気嚥下が増加し、げっぷの原因になることが報告されています。鼻咽腔閉鎖不全・咽頭の構造異常:空気の流れの異常により、ゲップ様の音や空気逆流を感じることがあります。生活習慣やストレス日常の習慣や心理的な要因もげっぷの頻度に影響を与えます。お腹の圧の上昇:肥満状態であったり、猫背で前かがみの姿勢が続くと、胃が圧迫されてげっぷが出やすくなります。ストレス:緊張や不安があると、無意識に空気を飲み込むことが増え、げっぷの回数が増加します。呑気症(空気嚥下症)の原因となります。げっぷの治療法ガストリック型ゲップ(gastric belching)胃酸抑制薬(PPI(プロトンポンプ阻害薬)/P-CAB):逆流性食道炎に準じて胃酸抑制薬を使用します。食事指導:炭酸飲料・ガム・早食い・喫煙を避け、食後すぐに横にならないことが重要です。外科手術(極めて稀):重症の逆流性食道炎を合併している場合、抗逆流手術(ニッセン噴門形成術)が検討されますスープラガストリック型ゲップ(supragastric belching)認知行動療法(CBT):空気嚥下の癖を意識し、行動を修正することを目的とします。吸気時に喉を閉じる練習、代替行動(例えば唾液を飲み込む、舌の位置を意識する)を指導します。音声療法(speech therapy)が有効という報告もあります。バイオフィードバック療法:食道内インピーダンスや音声フィードバックを使い、患者が自分のゲップを意識化することを目的とします。薬物療法(補助的役割):第一選択ではなく、効果は限定的です。不安が強い場合に抗不安薬(少量SSRI/SNRI)、リスペリドン少量の報告例もあります。生活指導:ストレス軽減、ゆっくりとした会話や咀嚼指導をします。げっぷが気になるようになってきたらげっぷは誰にでも起こる現象ですが、頻繁に出る場合は生活習慣や健康状態を見直すことが大切です。食事をゆっくり取ったり、飲酒を控えたり、ストレスの管理をしたりと、ちょっとした工夫で改善できることも多いので、気になる人は今日から意識してみましょう。もし気になる症状が続く場合は、消化器系などの病気が隠れていないか探すためにも、専門医の診察を受けることをおすすめします。参考文献大阪公立大学の発表したげっぷ障害の割合と疾患や生活習慣との関連を、1万人へのWeb調査から検証した論文Fujiwara Y, Sawada A, Kobayashi Y, Hosomi S, Otani K, Fukunaga S, et al. Prevalence of belching disorders and their characteristics in the general adult population. Am J Gastroenterol [Internet]. 2024;119:2526–2528.Bredenoord AJ, Smout AJ. Physiologic and pathologic belching. Neurogastroenterol Motil. 2007;19(9):767-772.Kessing BF et al. Pathophysiology, diagnosis and treatment of excessive belching. Neurogastroenterol Motil. 2014;26(9):1195-1203.日高滋. 「呑気症・機能性ゲップの診療」 日本消化器病学会雑誌. 2015;112(6):1079-1087.