便潜血とは何か潜血の意味とは便潜血とは、肉眼では確認できない微量の血液が便に混ざっている状態を指します。「潜血」という言葉は、見えない血液を意味し、これを検出することで健康状態の異常を早期に発見する手がかりになります。通常の便に血液は含まれませんが、消化管のどこかで出血がある場合、便の中に少量の血が混ざることがあります。血が便に混ざるとはどういうことか消化管は、口から肛門まで食べ物を運ぶ大切な臓器です。その途中にある胃や腸が何らかの理由で傷がつくと、血液が漏れ出し、それが便と一緒に排出されることがあります。便潜血が陽性になる原因としては、大腸ポリープや大腸がん、炎症性腸疾患、痔などが考えられます。ただし、すべての便潜血が重大な病気を示すわけではなく、一時的なものや治療が必要でない病気のこともあります。 目に見えない出血をどう見つけるか便の色が赤や黒く変化している場合は、出血の可能性を考えます。しかし、わずかな血液は肉眼では判断できません。そこで活用されるのが便潜血検査です。この検査では、便の中の血液を科学的に検出し、異常がないかを調べます。特に大腸がんの早期発見に役立つため、定期的な検査が推奨されています。便潜血が示す体の異常便潜血が陽性になる原因とは便潜血が陽性になる理由はさまざまですが、大きく分けると以下のような原因が考えられます。出血を起こす病気と偽陽性(検査の特性上、出血以外で陽性になる場合)です。 消化管の癌、炎症、他の病変(大腸がん・大腸ポリープ・潰瘍性大腸炎・クローン病) 肛門周囲の疾患(痔・裂肛など) 食事や薬の影響(一部の肉類・鉄剤・抗炎症薬など)特に大腸がんやポリープの検出に便潜血検査は有用であり、陽性の場合は精密検査を受けることが推奨されます。後ほど説明しますが、食道や胃からの出血では便潜血検査が陽性とならないことが多いです。一時的な出血と慢性的な出血の違い便潜血陽性といっても、原因は多岐にわたります。一時的な出血と持続的な出血に分かれます。例えば、痔による出血は排便時に一時的に起こることが多いですが、大腸がん、大腸ポリープや炎症性腸疾患などの場合は慢性的に出血が続く可能性があります。便潜血検査ではこの違いを特定することはできないため、便検査が陽性となった場合は精密検査、つまりは大腸カメラ検査を受ける必要になります。食べ物や薬の影響で便潜血になることはある?一部の食品(赤身肉・レバーなど)や、鉄剤などの薬によって便潜血検査が陽性になることがあります。特に化学法(現在は主流でない方法)では、食事による影響を受けやすいですが、現在広く使用されている免疫法では食事の影響は受けにくくなっています。そのため、便潜血検査の結果が陽性であれば、食事の影響を考慮しつつ、精密検査を検討することが重要です。 便潜血検査とはどんな検査か便潜血検査は、20世紀初頭から始まった長い歴史を持つ検査であり、当初は化学的な方法で便中の血液の存在を調べるものでした。その成り立ちは、がんの早期発見に対する模索と技術進歩の積み重ねによって築かれたものです。最初期の便潜血検査は、「グアヤック法」と呼ばれる化学的手法でした。この方法では、便に含まれるヘモグロビン(血液の成分)に含まれるペルオキシダーゼ活性に着目し、過酸化水素とグアヤック樹脂を用いて青色の変化を起こすことで血液の存在を示すものでした。グアヤック法は簡便で安価である一方、食事(赤身肉や魚など)や薬剤(鉄剤やビタミンCなど)の影響を受けやすく、偽陽性・偽陰性(病気でないのに陽性になる・病気があっても陽性とならない)が多いという欠点がありました。1970年代から1980年代にかけては、アメリカを中心にこのグアヤック法を用いた大規模な研究が行われました。代表的な研究として「Minnesota Colon Cancer Control Study」があり、この研究では便潜血検査により大腸がん死亡率が20~30%減少することが報告され、以降便潜血検査が広く認知されるようになりました。その後、1980年代末から1990年代にかけて、日本を含む各国で、より精度の高い「免疫学的方法」が開発・普及し始めます。これは、ヒトヘモグロビンに特異的に反応する抗体を用いるもので、食事や薬の影響を受けず、ヒト以外の血液に反応しないため、グアヤック法に比べて格段に精度が向上しました。検査の目的と役割便潜血検査は、大腸がんのスクリーニング検査として広く活用されています。特に症状のない段階で大腸がんや大腸ポリープを発見する手がかりとなります。大腸カメラ検査と比較して簡便であるため、健康診断でも実施されています。ただし検査の特性上、出血の原因や部位についてはこの検査では特定することができません。便潜血検査の有用性は世界的にも評価されており、アメリカのUSPST(米国予防医療専門委員会)や欧州のがんスクリーニングガイドラインでも、50歳以降の平均リスク群に対する大腸がんスクリーニングとして「便潜血検査(年1回)」が推奨されています。特に症状が現れる前段階でがんを捉えるスクリーニングの第一段階として、世界的にも手軽かつ費用対効果の高い方法として位置付けられています。なお、便潜血検査は主に大腸からの出血の有無を検出することを目的としており、胃や十二指腸などの上部消化管からの出血は検出されにくいという特徴があります。これは、上部消化管で出血が起こった場合、胃酸による変性や腸内を長時間移動する過程で消化・分解の影響を受け、便中に残るヘモグロビン量が減少するためです。そのため、上部消化管出血の可能性が高いと判断された場合には、便潜血検査だけではなく、上部内視鏡(胃カメラ)など他の検査が必要になることもあります。 一般的な健診で使われる便潜血検査健康診断やがん検診では、便潜血検査が基本的な項目として含まれています。この検査は痛みがなく簡単に行えるため、負担が少なく実施できるのが特徴です。特に40歳以上の方は定期的に受けることが推奨されており、便潜血陽性であれば大腸がんの可能性があり精密検査を受ける必要があります。1日法と2日法の違い便潜血検査には1日法と2日法があります。 1日法:1回の検体採取で判定 2日法:2回の検体採取で判定(より正確)検査の特性上、大腸がんなどの病気があっても陰性となる≒偽陰性 が多い検査です。そのため、2日法では検出率が高くなり信頼性が上がるため、健康診断では2日法が推奨されることが多いです。 1日法では進行大腸がんでも検出率は約60%と言われていますが、2日法では、約90%に達します。しかし便検査にはやはり限界があり、早期の大腸がんでは2日法でも検出率が約50%程度にとどまると言われています。以上から2日のうち1日だけ陽性であったから精密検査を受ける必要がないと判断するのは非常に危険です。検体の取り方と注意点便潜血検査の精度を高めるためには、適切な検体採取が重要です。以下のポイントを押さえておきましょう。便の表面から複数箇所を採取する検査前に特定の食品を控える(過去の化学法の場合)できるだけ新鮮な便を提出する- https://www.toholab.co.jp/info/archive/15662/ 詳細はこちらのリンクへ便潜血検査の方法と検体保存方法便潜血検査は2回検体を採取する必要があり、検体を保存する必要があります。保存は基本的に冷蔵暗所保存です。なぜ冷暗保存が必要なのかというと、便検体容器には糞便中のヘモグロビンを安定に保つための緩衝液が入っており、冷蔵保存(4℃)が最もヘモグロビンを安定させる温度になっているためです。最長で2週間は検体が安定し、安定したヘモグロビンの検出が可能になります。偽陽性・偽陰性の可能性とその対策便潜血検査には偽陽性・偽陰性の可能性があります。偽陽性:出血する病気がないにも関わらず、食事や薬の影響で誤って陽性になる偽陰性:出血する病気があるのに検出されないことがあるおなかの症状があるにも関わらず陰性の場合は、偽陰性の可能性も考えられます。定期的な検査と異常が続く場合の精密検査が大切です。便潜血陽性とはどういう状態か陽性=がんとは限らない便潜血検査が陽性になったからといって、必ずしも大腸がんがあるわけではありません。痔や炎症性腸疾患、ポリープなどの良性疾患でも陽性になることがあります。また、食事や薬の影響で偽陽性となることもあるため、陽性=がんと決めつけるのは早計です。一方、日本で行われた大規模調査「多目的コホート研究(JPHC Study)」では、40〜69歳の住民における便潜血陽性者は、陰性者と比較して約5〜10倍の大腸がん罹患リスクがあると報告されています。また国立がん研究センターによると、便潜血検査陽性者のうち、およそ5%に大腸がんが発見され、さらに30〜40%に大腸ポリープなどの前がん病変が見つかるとされています。このように便潜血陽性=がんではありませんが、便潜血陽性は決して軽視すべきでない重要な所見です。陽性時の受診の必要性便検査陽性の場合、研究結果から約5%程度の割合で大腸がんの可能性があると言えます。大腸がんは進行するまで症状が全くないことも珍しくありません。便潜血検査が陽性になった場合、精密検査(大腸内視鏡検査)を受けることが推奨されます。特に40歳以上の方は、がんのリスクが高まるため、早めの受診が重要です。陽性のまま放置するとどうなるか便潜血陽性を放置すると、大腸がんの早期発見の機会を逃す可能性があります。大腸がんは進行すると完治が難しくなります。反対にポリープの段階や早期がんの状態であれば、内視鏡治療で完治を得られる場合も多いです。陽性結果が出た場合は適切な検査を受けることが大切です。便潜血から疑われる疾患大腸ポリープ大腸ポリープは良性の腫瘍ですが、一部はがん化する可能性があります(大腸カメラ検査でがん化する種類のポリープか判別可能です)。ポリープが大きくなると出血し、便潜血検査で陽性になることがあります。大腸がん便潜血検査は大腸がんのスクリーニング検査として有効です。特に進行したがんでは出血が多くなるため、検出率が高くなりますが(1日法で約60%、2日法で約90%)、早期がんの場合では検出できないこともあります。(2日法でも約50%) がんの発見は便潜血検査の1番の目的になります。潰瘍性大腸炎潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に炎症が起こる疾患で、慢性的な出血を伴うことがあります。便潜血検査で陽性になることが多く、診断の一助となります。症状がなく便検査で偶然見つかった場合は、治療せず経過をみることもありますが、この病気と大腸がんの発症との関連が言われており早期発見は重要です。クローン病クローン病は消化管全体に炎症が起こる疾患で、特に大腸に病変がある場合は便潜血陽性になることがあります。こちらについても便検査で偶然見つかった場合は、治療せず経過をみることもありますが、病気が急に悪化する場合や知らない間に炎症を繰り返して腸が狭くなったりする場合もあるため早期発見は重要です。痔や裂肛との違い痔や裂肛による出血は肛門付近で起こるため、鮮血が便の表面につくことが多いです。便潜血検査ではこれらの出血も検出されるため、精密検査で原因を特定することが重要です。反対に鮮血であるため痔と判断するのも危険です。がんが肛門に近い場所にできている場合や出血が多い場合は鮮血として症状がでることもあるためです。大腸がんとの関係便潜血と大腸がんの早期発見便潜血検査は大腸がんの早期発見に役立つ検査ですが、すべてのがんを検出できるわけではありません。特に出血の少ない早期がんは検出率が低くなるため、定期的な検査が推奨されます。ステージ別に見た便潜血の有用性ステージ便潜血検査の検出率(2日法)早期がん(ステージI)約50%進行がん(ステージIII以上)約90%進行がんでは出血が多くなるため、便潜血検査で検出されやすくなります。早期大腸がんの治療は、内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)といった内視鏡のみで体に傷が付かない低侵襲な治療で完結できるケースが多く、入院日数も短く済む傾向があります。進行がんの場合、外科手術や化学療法が必要となり、身体的・精神的・経済的な負担も大きくなります。そのため、便潜血検査により「出血しているかも」という早期サインを捉えることが、がん治療全体の質に大きく影響します。便潜血が陰性でもがんの可能性は?便潜血検査が陰性でも、大腸がんの可能性を完全に否定することはできません。特に出血の少ない早期がんは検出されないことがあるため、症状がある場合は内視鏡検査を受けることが推奨されます。便潜血陽性時の精密検査大腸カメラ検査(下部内視鏡検査)の必要性便潜血検査が陽性の場合、精密検査として下部内視鏡(大腸カメラ)検査が推奨されます。この検査は、大腸の内部を直接観察できるため、ポリープやがんの有無を詳しく確認できます。特に、大腸がんの早期発見には欠かせない検査です。またポリープや早期がんに関しては大腸カメラで治療することが可能です。内視鏡でどこまでわかるか大腸内視鏡検査では、大腸の粘膜を詳細に観察し、ポリープ・炎症・がんなどの異常を確認できます。拡大機能が備わっており、1mm以下の細かい構造まで観察可能です。また血管や表面の構造を観察するためのモードも備わっており、拡大機能との組み合わせることによって癌の診断、ポリープの種類(がんになる種類かどうかなど)を高い精度で判断可能です。必要に応じて組織を採取し、生検(病理検査)を行うことでもがんの診断も可能です。また、発見したポリープはその場で切除できるため、予防的な意味でも重要な検査と言えます。精密検査を受けるタイミングと流れ便潜血検査で陽性となった場合、できるだけ早く精密検査を受けることが推奨されます。一般的な流れとしては以下の通りです。専門医療機関(専門医)の外来診察(検査内容・必要性・方法などを確認)内視鏡検査の前準備(前日の食事制限、検査当日の腸内洗浄、便秘の方は数日前からの下剤)大腸内視鏡検査の実施(異常がないか確認、がんや炎症があれば生検、ポリープがあれば切除を行う)結果説明と今後の対応(異常がある場合、治療方針を検討)精密検査で異常がなかった場合便潜血検査が陽性でも、内視鏡検査で異常が見つからない場合もあります。これは一時的な出血や検査の影響によるもので、大きな問題がないことを意味します。ただし、定期的な検査を継続することが重要です。便潜血検査を受けるべき人とは健康診断の対象年齢便潜血検査は、40歳以上の方が定期的に受けることが推奨されています。大腸がんの発症リスクは年齢とともに高まるため、特に50歳以上の方は注意が必要です。家族に大腸がんの人がいる場合大腸がんは家族歴との関連が指摘されている疾患です。また一部で遺伝により発生する大腸ポリープ・大腸がんがあります。親や兄弟に大腸がんの方がいらっしゃる場合、通常よりリスクが高いため、40歳未満でも定期的な検査を受けることが望ましいとされています。便に異変を感じたとき以下のような症状がある場合、年齢に関係なく早めの検査を受けることが望ましいです。便に血が混じる(赤や黒っぽい便)便が細くなった(腸内の異常の可能性)慢性的な下痢や便秘(炎症や腫瘍の可能性)定期的に受けるべき理由大腸がんはかなり進んだ段階になるまで症状はないことも少なくありません。また発見が早ければ早いほど体に負担の少ない治療を受けることが可能です。便潜血検査はがんの早期発見に役立つスクリーニング検査であり、症状がなくても定期的に受けることでリスクを低減できます。年に1回の検査が推奨されており、特に健康診断に組み込まれている場合は、積極的に活用しましょう。また大腸カメラ検査を受けてポリープや癌を治療した後の方は、ポリープやがんが出来やすい体質の場合もあり、定期的な内視鏡検査を受けることでがんのリスクを低減できます。便潜血検査の限界と誤解すべてのがんが発見できるわけではない便潜血検査は大腸がんの早期発見に役立ちますが、すべてのがんを検出できるわけではありません。単純に便中の血液成分の有無を判定する検査がゆえに早期がんや出血の少ない病変は検出されにくいという特徴があります。 反対にがん以外でも出血していれば陽性となるため、陽性=がんということではありません。落ち着いて精密検査を受けましょう。1回の検査だけでは不十分?便潜血検査の感度(≒がんを発見できる割合)は1日法よりも2日法の方が高く、より正確な結果が得られます(1日法;約60% vs 2日法;約90%)。さらに毎年検査を続けることで、より確実なスクリーニングが可能になります。一度陰性でも、大腸がんのリスクがゼロになるわけではないため、定期的な検査が大切です。予防的な意味での限界と役割便潜血検査は大腸がんの早期発見には有効ですが、がんを予防したり治療したりできるものではありません。ポリープの段階で発見し、内視鏡で切除することでがん予防につなげることができます。そのため、定期的な便潜血検査に加えて、一定の年齢で大腸カメラ検査を受けることが望ましいとされています。当院における便潜血陽性後の対応大腸カメラ検査による精密検査体制便潜血検査が陽性の場合、早期に大腸内視鏡検査を実施することが重要です。当院では、オリンパス社の最新内視鏡システム(EVIS X1シリーズ)を導入し、精度の高い検査を提供しています。このシステムは、4Kの高解像度の画像や特殊な観察モードを備えており、微細な病変も見逃さないことが特徴です。さらに、検査時の負担を軽減するため、鎮静剤を使用した内視鏡検査を実施しています。これにより、患者さんはほぼ眠った状態で検査を受けることができ、痛みや不快感を軽減できます。(※鎮静なしや会話ができる程度の浅い鎮静、鎮痛のみなどの要望にも対応しています)経験豊富な医師による診断当院では、消化器内視鏡専門医が複数名在籍し、チーム体制で検査と診断を行っています。これにより、豊富な検査枠を確保しており、迅速かつ正確な結果の提供が可能です。特に、大腸がんやポリープなどの病変の発見・診断には技術が求められますが、当院では専門医が丁寧に対応します。また複数人で検査結果を共有することでより見落としや診断ミスを少なくする体制としています。また、検査後には詳細な診断結果を患者さんにわかりやすく説明し、必要に応じて治療や今後の経過観察についての方針をご説明・ご相談致します。入院治療やCTなどの精査が必要と判断した際には、ご希望の総合病院へご紹介致します。検査結果のわかりやすい説明検査結果は、専門的な内容が多く、不安を感じる方も少なくありません。当院では、患者さんが納得して診断結果を理解できるよう、丁寧な説明を心がけています。特に以下の点を重視しています。画像を用いた説明:内視鏡で撮影した画像をもとに、病変の状態を具体的に説明専門用語をできるだけ避ける:患者さんが理解しやすい言葉で解説今後の方針についての案内:治療が必要か、経過観察で問題ないかを明確に提示検査後のアフターフォローと治療方針精密検査を受けた後も、患者さんが安心して治療を進められるよう、アフターフォローに力を入れています。具体的には以下のような対応を行っています。ポリープが発見された場合は、その場で切除(必要に応じて組織検査を実施)異常がなかった場合でも、定期的な検診を推奨がんや炎症性腸疾患が疑われる場合は、専門医による治療方針の立案患者さんの不安や疑問に対応するための個別相談の実施よくあるご質問(FAQ)食事で便潜血陽性になりますか?現在の便潜血検査(免疫法)は、食事の影響を受けません。そのため検査前の食事制限は不要です。以前の化学的な検査方法では、赤身肉やレバーなどを摂取すると偽陽性になることがありましたが、当院含め、現在主流の便検査では心配不要です。心配であれば受ける便検査がどちらの手法であるか確認するとより安心です。毎年陰性でも安心してよいですか?便潜血検査はスクリーニング(ふるい分け)検査であり、すべての病変を確実に検出できるわけではありません。負担が少なく、効率的に大腸がんを発見することが目的であり、簡便ではあるものの検査精度はもちろん大腸カメラには遠く及びません。特に早期の大腸がんは出血が少ないため、便潜血検査では見逃されることがあります。そのため、毎年陰性であっても、40歳以上の方は定期的に大腸内視鏡検査を受けることが推奨されます。アメリカでは45歳で大腸カメラを受けることが一般的となっています。大腸カメラは痛いですか?当院では、鎮静剤を使用した検査を行っており、痛みや不快感を軽減しています。ほぼ眠った状態で検査を受けることができるため、負担が少ないのが特徴です。検査終了後は少し休憩し、医師から検査結果の説明を受けた後に帰宅となります。また鎮静・鎮痛を希望しない場合でも経験豊富な専門医が痛みや苦痛に最大限配慮して検査を行います。患者さんの大腸の形やお腹の手術歴の有無によっても検査の痛みや不快感は大きく異なるため、鎮静・鎮痛なしでも検査が痛くないという方も一定数いらっしゃいます。陽性でしたが症状がありません。受診すべきですか?便潜血検査が陽性でも、症状がないケースは多くあります。むしろ検査の目的はそういった無症状の状態で病気を見つけるところにあります。無症状でもポリープや早期がん、もしくは進行がんである可能性はあるため、精密検査(大腸内視鏡検査)を受けることが推奨されます。特に40歳以上の方や家族に大腸がんの方がいる場合は、早めの検査が重要です。胃の病気(胃がん、胃潰瘍など)も見つかりますか?現在の便潜血検査は免疫化学法が主流になっており、胃や十二指腸などの上部消化管からの出血には反応しないキットが一般的です。そのため胃の病気の同定には関係がありません。痔があると検査に影響しますか?影響します。しかし痔があることで便潜血検査を受けない理由にはなりません。痔の影響で陽性になっても大腸カメラを受けることのメリットが大きいためです。過去1年以内に大腸カメラを実施済みである場合は専門医を相談して実施の判断をするようにしてください。便が水に浸かってしまいました。どうしたらいいですか?少し水に浸かる程度は問題ありませんが、極力水に浸からないよう採便シートを使用するようにしてください。塩素系洗剤などで便器をきれいにした直後であれば検査の感度に影響する可能性があります。改めての機会に採便した方がいいでしょう。生理中ですが、便潜血検査を受けた方がいいですか?便潜血検査は、生理中は避けるべきです。生理中の経血が便に混入すると、検査結果が陽性になる可能性があり、正確な検査結果が得られないためです。生理が終わってから2~3日後に採取するのが望ましいです。下痢ですが便潜血検査を受けた方がいいですか?下痢の場合、規定の量が取れない可能性があり、その正確性に影響が出ることがあります。しかし、検査自体は可能ですのでどうしても下痢以外出ない場合はそれで提出する形でも許容されます。その際はスティック全体を便に付けるようにしてください。いつ採取すればいいの?朝でも夜でもいい?採便は朝である必要はありません。排便があるタイミングであればいつでも問題ありません。便に血が付着していました。便潜血検査をした方が良いですか?肉眼的に血液が付着した便(血便)を認めた際は便潜血検査に意味はありません。必ず陽性になりますので、内視鏡専門医を受診し大腸カメラの相談をしてください。薬を飲んでいても検査できますか?ほとんどの場合、検査可能です。ただし、抗凝固薬・抗血小板薬(血液をサラサラにする薬)を服用中の方では、出血しやすくなり陽性になる可能性があります。ご心配な方は主治医にご相談ください。まとめ便潜血検査の限界と今後の課題便潜血検査は、大腸がんのスクリーニングとして非常に広く利用されている検査であり、その有用性は多くの研究でも示されています。特に近年主流となっている免疫学的方法は、従来の化学的方法に比べて感度(≒病気を見つけられるか割合)と特異度(陽性者のうちがんであった割合)が高く、食事の影響も受けにくいという利点があります。例えば、ある日本の研究では、便潜血2日法における大腸がん検出感度は約90%、特異度は90%以上と報告されています。一方で、便潜血検査は「血が出ているかどうか」のみを調べる検査であり、その出血の原因までは特定できません。つまり、がんによる出血か、良性疾患(痔や裂肛など)による出血かの鑑別はつかず、また出血のない初期がんに対しては感度が低いという問題があります。実際、早期大腸がんにおける2日法での感度は約50%前後であり、この検査の限界も存在します。さらに重要な視点として、便潜血検査の最大の意義は「精密検査へつなげること」にあります。便潜血陽性となった後に、患者が精密検査である大腸内視鏡を受けなければ、その検査の価値は大きく減じてしまいます。しかし、国内の複数の報告では、便潜血陽性者のうち実際に内視鏡検査を受ける人は約50〜60%にとどまっており、受診率の低さが早期発見率の向上を妨げている現状があります。その背景には、「症状がないから大丈夫」「痔があるからそれが原因だと思う」といった誤解や、「大腸カメラは痛い、怖い、恥ずかしい」といった心理的なハードル、さらに医療機関の予約の取りづらさや検査前処置(下剤)への抵抗感など、複数の要因が複雑に絡んでいます。こうした課題に対し、当院としては以下のような取り組みが有効と考えられています。便潜血陽性の意義を丁寧に説明し、不安や誤解を軽減する鎮静剤や最新機器を用いた苦痛の少ない大腸内視鏡の実施検査前の準備(下剤など)に対するわかりやすい説明やフォローアップ体制豊富な検査枠の確保による迅速な対応最後に、便潜血検査を「継続的に受ける」ことの重要性にも触れておきたいと思います。大腸がんは比較的進行が遅いがんであり、1年ごとの検査でも早期発見に十分間に合う可能性があります。また、毎年の検査により一度陰性であっても翌年に陽性となり、がんが見つかるケースも多く報告されています。したがって「昨年陰性だったから今年は不要」と考えるのではなく、継続的な検診こそががんから命を守る鍵となります。厚生労働省の「がん対策推進基本計画」でも、便潜血検査を含む大腸がん検診の受診率向上は重点課題として挙げられています。特に日本では女性より男性の方が精密検査への受診率が低い傾向があり、働き盛り世代での早期発見の遅れが指摘されています。また、海外の研究でも、便潜血検査後のフォローアップとして大腸内視鏡を受けなかった群は、大腸がんによる死亡率が高くなる傾向があることが報告されており、精密検査への移行の重要性は国際的にも共通の認識となっています。検診は「受けたこと」で終わりではなく、「陽性時に行動に移すこと」が重要です。メッセージ便潜血検査は、自覚症状がないうちに大腸がんを発見できる数少ないチャンスです。便潜血検査が陽性であったら怖がらず、疑問があれば医療機関に相談しましょう。また定期的な便潜血検査による大腸がん検診を習慣にしましょう。